「本当は聞こえていたベートーヴェンの耳」

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今日はこちらを読みました。

本当は聞こえていたベートーヴェンの耳

本当は聞こえていたベートーヴェンの耳

「本当は聞こえていたベートーヴェンの耳」江時久/NTT出版
最初タイトルを見た時は、
ベートーヴェンの耳には全然異常が無かったっていう意味かと思って
トンデモ本の類?」と思ってしまったんですが(;゜∀゜)ゞ
パラパラとめくってみるともちろんそうじゃなかったです(笑)
ベートーヴェンの耳に対してきちんとした医学的根拠を元に丁寧に考察がされており、
興味を持って読み始めました。


今までの定説では、(おおざっぱに言うと)
ベートーヴェンの耳は20代後半から聞こえなくなり、
30代以降の数々の名曲は耳が聞こえない状態で書かれたとされています。
しかし著者は「ベートーヴェンは「『あぶみ骨』固着の伝音難聴」だったのであり、
人の言葉は聞こえなかったけれどもピアノの音は聞こえていた」、
そしてさらに、「それは20代後半に始まったのではなく、
実は10代半ばからすでに難聴だったのではないか」という説を打ち出しています。


自身も難聴者である著者の書く言葉には説得力があり、
ベートーヴェンが難聴を隠すために社交を避け、
思春期に誰にも言えぬ苦しみの中で唯一しっかりと聞こえるピアノの音を救いに
音楽に没頭する姿が鬼気として伝わってきます。

ピアノが好きなベートーヴェンは、ある日、
おそらく16歳から18歳頃の時期に、
宮廷の貴族達や、音楽仲間達や、あるいはブロイニング家の人達との
コミュニケーションの中において、ふと聞こえない言葉があり、
自然にとぼけざるを得ない局面を経験するようになっていった。
そう考えて想像してみよう。
まさか自分の聴覚に劣るものがあるなどとは
夢にも信じることはできなかったであろう。
体の不調に関することである。本来なら、すぐにも家族に訴えたいところなのだ。
ところが、ベートーヴェンがその苛酷な難聴の運命を自覚したときに、
そのことを訴える母親は病身だった。あるいはもう死んでしまっていた。
父親はアルコール依存症だった。相談する相手が誰もいなかったことになる。
(中略)家庭愛の欠如や貧困の問題だけでも、
彼の人生を艱難辛苦の中からの出発と評することが出来るであろう。
しかし、苛酷だったのはそのことだけではなかった。
彼はその上に難聴というハンディキャップを抱えており、
しかもその不運な家庭をピアニストという職業で支えなければならなかった。
「この耳は段々聞こえなくなって、将来必ずろうになってしまう。
 一体どうしたらいいんだ」
まだ中学生・高校生の年齢である。
親のスネをかじるのが当然の若者だったのに、
彼は難聴を慰めてもらうどころか、憤懣の吐け場がないまま、
父や弟たちに対して、将来への肉体的不安を抱えながら、
けなげな孝行息子の役割さえ担わなければならなかった。
心理的には、ひどい重圧を受けていた。難聴が暴露されてしまえば、
差別に厳しい時代にあっては、たちまち宮廷から追放されてしまう。
そのことは、彼ばかりでなく一家が路頭に迷うことでもあったから、
難聴であることはあくまでも隠さなければならない。(中略)
想像できるのは、恐らく彼は人付き合いを避けて、
音楽の中に積極的に逃げたということだ。
卓抜した演奏力を誇示することしか、
ベートーヴェンには切り抜ける手段がなかった。
ピアノの演奏力をつけることは、人々のいじめの危険から逃れるための、
一番安全で確実な方法であり、それはまた、
彼の人間としての修行の目標でもあった。
彼の演奏力に感心した人々は、少しばかり無口でおかしい性格があったとしても、
まさか耳が遠いとは思いもよらなかったろう。
ピアノが上手くなることは、精一杯の防御だったということにもなるのである。

そして著者は、聴覚障害を持つ人々が抱える様々な苦しみにも言及しており、
普段そのようなことをまったく考えていなかった自分はハッとさせられました。


医学にもベートーヴェンにも特別な知識のない私には
この本で打ち出している説が正しいのかどうかはもちろんわからないのだけれど
非常に興味深く読めましたし、筆者のベートーヴェンに対する共感、そして
難聴者の持つ苦しみを理解して欲しいという熱い思いが伝わってきました。
読んでみて良かったと思います。


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