当時の常識と今の常識

漱石は私は面白いと思いますよ。100年近く前に書かれながら、
現代にも通じる心象を描けているところは素晴らしい。
ただ、古い作品ではあるので、
現代の小説と単純に同列に扱えないのも確かです。
私は古い作品(古典ではない)を読むときは、
ある程度「面白がる」ことが必要なんじゃないかと思っています。
(中略)

「マンク」
悪魔に誘惑された修道僧が背教の限りを尽くすというストーリーで、
書かれた19世紀当初はさぞかしスキャンダラスな作品だっただろうと
想起されます。
読んでみるとこれが意外と面白い。
でも、今の感覚からすると
「すさまじい背徳と残虐」というのは言い過ぎで、
少し過激なエロチックサスペンスという感じ。
ここで「なーんだ、この程度か」と思うのではなく、
当時の世相にも思いをよせて
「どんでもないものを書きやがったな」と思うのが
適当な鑑賞態度なのかなという気がしています。


副業的ネット古本屋の日々焦燥
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shiroinekoさんもコメントで触れておられましたけど、
私も一番最初に夢野久作を読んだときにすごく感じたんですよね!
ドグラ・マグラ」だったんですけど、
がんばって最後まで読んで、
正直「ほえ・・・?(;´▽`)」と思いました。
「ミステリー史における最大の奇書」
「読んだ者が発狂してしまう(!)」
「今までに体験したことのない妖しく摩訶不思議な世界」
などなど謳い文句がすごかったので、期待もものすごくて(^^;)。
でも読後の正直な感想は、
「当時にしてみればきっとものすごく
 センセーショナルな作品だったんだろうけど、
 今はもうもっと妖しさもグロさも強烈な作品が
 いくらでもあるからなあ・・・」でした。
でも本当に、当時にしてみれば想像もできないほど
前衛的で独創的な小説だったのですよね。
でも私としては、「ドグラ・マグラ」よりもむしろ
「人間腸詰」なんかの方がゾクゾクッッ!!(‖0Д0)
と来たけどな〜。面白い短編も色々あるのにな。


昨日パウル・クレーの絵の本を見ていたのですが、
やはり同じようなことを横でくまきちが言っておりました。
ポップアートなんかでこういう絵は珍しくないと思うけど、
この時代にこれを描いたっていうことを考えると
本当にすごいよね、って。
その時代時代の世相や常識をわかってから作品に触れないと、
せっかくの本当のすごさがわからないかもしれないし、
それはもったいないことかもしれないですね(><;)