三浦環

おととい買った三浦環の自伝を早速読みました。
非常に面白く、一気に読みました。

三浦環―お蝶夫人 (人間の記録 (27))

三浦環―お蝶夫人 (人間の記録 (27))


三浦環(1884〜1946)は日本人として始めて
国際的に活躍したオペラ歌手です。
日本を舞台にしたプッチーニの歌劇「蝶々夫人」の
ヒロイン役を武器に、
欧米で約20年間に渡り
輝かしいプリマドンナとしての栄光を築きました。
作曲家プッチーニをして
「あなたには他のプリマドンナのように、
 己惚れと自尊心のために蝶々さんの性格を表すことを
 忘れている欠点がないばかりか、
 あなたが日本のプリマドンナであるため、
 日本婦人の貞淑さと日本情緒も完全に出してくれました。
 あなたは世界にたった一人しかいない、
 最も理想的な蝶々さんです。」

と言わしめたほど、欧米で大絶賛を浴びました。
そしてまた、
「マダム三浦、どうぞあなたの蝶々夫人
 オリジナリティを失わぬようにして下さい。
 場当たりを狙わず、本当の蝶々さんの気持ちを
 ステージに再現して下さい」

というプッチーニの言葉を忠実に守り、
彼女は以後も他のソプラノが歌う「蝶々夫人」を
決して見たり聴いたりすることをせず、
自分自身の役を守り続けたそうです。


今よりもはるかに男尊女卑であり
女性の社会進出が難しかったこの時代に、
日本を代表するソプラノ歌手として
様々な苦難を乗り越えて
亡くなる直前まで活躍し続けたその姿に、
非常に感銘を受けました。


中でも大変印象に残ったのが、
生涯最後のコンサートとなってしまったステージで
彼女が語った言葉です。

日本はこれからもっと眼を大きく見開いて、
世界の平和、世界の文化のためにつくさねばなりません。
上野の音楽学校(現・芸大)で
創立三十年か四十年かのお祝いをした時、
音楽に功労のあった者を表彰するというので、
当然私はご褒美をいただけるものと思いました。
だのに表彰されたのは、音楽の先生を何十年やっていました、
というそんな人ばかりで、
二十年間日本の生んだプリマドンナとして
欧米でオペラをやった私には何もご褒美を下さらない。
日本人は国内だけで威張り、日本のことしか考えないで、
世界のことを忘れていたから、今度の戦争にも負けたのです。
私はパティ、ガリクルチ、カルーゾー、ジーリ
シャリアピンパデレフスキー、アンナ・パラヴロヴァ等
世界一流の大芸術家と一緒のステージで歌った
日本でもっとも幸福な女の一人ですが、
これからの日本は、これからの音楽家は、
もっと眼を大きく見開いて、
愛情と誠実と努力をこめて歌を歌わなくてはいけません。

当時の芸術家、政治家、軍人など、
様々な人間達にこの言葉を突きつけたかったことでしょう。
そして残念ながら現代でも、
同じような状況は多々見受けられるように思います。


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