花闇/皆川博子
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☆ ☆ ☆
今日はこちらを読みました。
- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2002/12/13
- メディア: 文庫
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幕末から明治の初めにかけて一世を風靡した歌舞伎役者がいた。
三代目・沢村田之助。名門に生まれ、
美貌と才能に恵まれた女形として絶大な人気を博しながら、
不治の病におかされて三十四歳の若さで逝った。
進行する病魔と闘い、足を失いながらも舞台にたつその気迫。
芸に憑かれた人気役者の短くも数奇な生涯を、
同門の大部屋役者の目を通して情緒豊かにつづる長編小説。
先日北森鴻さんの「狂乱廿四孝(きょうらんにじゅうしこう)」を読んだ時に
三代目・澤村田之助の名前を初めて知りまして(2007.4.28.参照)、
読んでみたいと思っていた本です。
最後は本当に悲しいですね・・・名女形として絶頂にある時に脱疽に冒され、
片足を切断しても不屈の意志で舞台に復帰できたと思ったら、
病気の進行は終わっておらずもう一本の足も切断することに。
それでも大道具さんや脚本家の多大な力を借りながら、
両足を失っても必死の努力により再び舞台に立てたと思った矢先、
手をも切断することを余儀なくされ・・・・・。
最後はまるで見世物のようにドサ回りをせざるを得ず、
発狂し座敷牢の中でその短い生涯を終えるのです。
何て残酷な運命なのだろう、けれどもその悲劇的な生涯ゆえに
後世の記憶にも強く残り、人々の心を打ち続けるのでしょうけれども・・・。
本の中で、当時の歌舞伎界の様子が詳しく描かれていて面白いです。
江戸の頃は役者の地位は本当に低くて、
例え人気があってもお上からは賤民のような扱いを受けていたのですね。
やがて明治になり江戸が東京と名を変え、
新政府も介入しお芝居の世界も意識改革が始まります。
政府の高官達が西洋劇のはなはだ高尚であることを懇々と説き、
西洋の劇を模範とし改良の任に当たるよう命じ、
死と性を謳いあげた江戸末期の芝居はとどめをさされ、
「善悪邪正の節正しく」「温和平旦のこと」を演じる新しい東京の芝居が・・
と書かれています。
また役者たちは残酷なほどはっきりとランク分けがされていて、
名門の子でない限り大きな出世も望み得ず、扱いの落差も大変大きかったのですね。
ところでこの本の登場人物に月岡芳年も出てきました。
そのあたりも興味深かったです。
三代目・澤村田之助のことを検索していたら面白いページを見つけました。
宝井琴梅のシンセサイザーコウダン「田之助の義足芝居」
http://www5.ocn.ne.jp/~kinbai/tanosuke.html
田之助の脱疽の原因になった舞台上の事故とヘボン博士による手術の様子が
講談で語られています(「花闇」とはまたちょっと違ったお話になっているようですが)。
田之助の当時のブロマイドも見ることが出来ます。
なにぶん古い写真ですし顔立ちはわかりづらいのですが、
豪奢な衣装に身を包んだその姿からは
確かにゾクゾクするような妖しい雰囲気が感じ取れますね。
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